プレスリリース

報道各位
2020.11.10

種苗法「改正」案に慎重審議を求める意見書を提出

東都生協は衆議院農林水産委員に「種苗法『改正』案に慎重審議を求める意見書」を送付しました。


2020年11月10日

衆議院農林水産委員会
委員各位


種苗法「改正」案に慎重審議を求める意見書

東都生活協同組合
理事長 風間 与司治


 私たち東都生活協同組合は、東京を中心に25万余の組合員によって組織され、安全・安心な食料を将来にわたって安定的に手にするために、全国の農畜水産業者や製造者と共に事業と運動に取り組む消費者組織です。

 当組合は1973年の設立から一貫して、日本の農業を守り、食料自給率の向上を図ることを目標に掲げた活動を推進しています。食の安全・安心、いのちとくらし、国内農業を巡る情勢が深刻化する中で、消費者が生産者と直接手を結ぶ「産直」(産地直結)を事業と運動の基軸に据えてきました。2008年からは「産直」を生産・流通・消費の在り方を問い直す運動として捉え、食卓からの食料自給率向上や国内農業の応援など、消費者と生産者が手を携えて持続可能な社会を目指す「食の未来づくり運動」に取り組んでいます。

種苗法「改正」案は、先の通常国会で食の安全を願う多くの消費者・農業者・市民・地方自治体の強い反対の声に押され、一度も審議されることなく継続審議となりました。しかし、政府は現在開催している臨時国会で成立させようとしています。今国会がなすべきことは、新型コロナウイルス終息後の社会、経済の在り方を見据え、最善の方向を見出すための検討ではないでしょうか。食と農への大きな影響が懸念される中、短時間の議論で法改正を強行するようなことはあってはなりません。仮に審議するとしても、参考人招致、公聴会の実施など、国民の声に耳を傾けた慎重審議を求めるものです。

 今回の種苗法「改正」案には、次のような問題点を踏まえた論議を求めます。

1.食の安全が脅かされます。
 大手種子企業の登録品種が増えることで、ゲノム編集や遺伝子組換えによる種苗が出回る可能性があり、食の安全・安心への不安が増します。

2.「自家増殖」は農業者の権利であり、現行法でも海外流出は防げます。
 「自家増殖」は農業者の権利として、育成者権保護を目的とする国際条約UPOV91でも認めています。また、2018年11月に国連総会で採択した「農民の権利宣言」でも、農業者の自家増殖の権利を明記しています。農業者はその土地の土壌や気候に適した種子を長い年月をかけて育成し、野菜や果物を育ててきました。これは農業者の知的財産です。
 農林水産省などは、改正理由を「優良品種の海外流出を防ぐため」と説明していますが、すでに現行法でも禁止されています。また、「自家増殖を禁止しても、海外で品種登録をしない限り流出は防げない」と農林水産省自身が認めています。

3.原則として全ての登録品種の自家増殖が許諾制になります。
 今回の改正で全ての登録品種の自家増殖が許諾制になると、許諾に関する事務手続きや費用負担の増加が見込まれ、農業経営などに甚大な影響を与えます。ひいては消費者の選ぶ権利を阻害します。

4.最大の利害関係者である農業者と消費者の意見を述べる権利の確保が必要です。
 農業者や消費者の利害関係者として意見を述べる権利を奪うことは許されません。農林水産省は、事前に全国各地で十分な意見陳述の場を確保する責任があります。国会でそれを保証する必要があると考えます。

以上