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2017.01.13

「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」中間とりまとめに対し意見書を提出

東都生協は2017年1月13日、経済産業省が意見を公募する「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」による「中間とりまとめ」に対し、意見書を提出しました。

経済産業省は昨年12月、福島第一原発事故の賠償や廃炉など処理費用が、従来想定の11兆円から21.5兆円に拡大したことを明らかにしました。この「中間とりまとめ」では、原発事故による賠償・廃炉費用を託送料金に上乗せして回収することなどを検討しています。

福島第一原発事故から6年がたとうとする今も、依然として事故原因の究明や責任追及がなされず、事故収束の見通しすら立っていません。事故を起こした東京電力と国の責任もあいまいなままです。こうした中で消費者・国民にとって見えにくい形で負担を拡大することは許されず、電力システム改革の趣旨からも、消費者・国民の納得性という点からも同意できないなどととする意見書を提出しました。主な内容は以下の通りです。

1.賠償費用の過去分を託送料金に転嫁し、需要家に負担を求める制度変更は行うべきではありません。原子力発電事故の賠償費用については、新たな制度を構築する前に東京電力と国の責任の取り方を検討すべきです。

2.東京電力送配電部門(東京電力パワーグリッド株式会社)の経営合理化により捻出された資金を、本来の使途である託送料金の引き下げに充当せず、廃炉費用に充てることに反対します。

意見書全文はこちら(PDFが開きます)
2017年1月11日


経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部 電力市場整備室
パブリックコメント担当 御中

東都生活協同組合
理事長 庭野 吉也

電力システム改革貫徹のための政策小委員会・中間取りまとめに対する意見


私たち東都生活協同組合は、東京中心に23 万余の組合員が、いのちとくらしを守るため、全国の生産者と共に持続可能な社会に向けて活動する消費生活協同組合です。私たちは東日本大震災に伴う福島第一原発事故の直後から、被災地支援と食の安心確保、原発依存からの脱却と再生可能エネルギー推進に向けて取り組んできました。

貴省は昨年12 月、福島第一原発事故の賠償や廃炉など処理費用が、従来想定の11 兆円から21.5兆円に拡大するとの試算を示しました。原発にひとたび大事故が生じた場合には、国民生活に取り返しのつかない被害を及ぼし、事故の収拾や賠償、除染などに莫大な費用を要することを、私たちは深刻に受け止めています。

しかしながら福島第一原発事故から6 年がたとうとする今も、依然として事故原因の究明や責任追及がなされず、事故収束の見通しすら立っていません。事故を起こした東京電力と国の責任をあいまいにしたまま、消費者・国民の負担を拡大することは許されるものではありません。

私たちは以下の通り、今回の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会中間取りまとめ」の内容に対し、電力システム改革の趣旨からも消費者・国民の納得性という点からも同意することはできません。

(1) 廃炉・賠償費用を託送料金に上乗せして徴収する方法は、電力を利用する全ての消費者・国民に負担を求めることにほかならず、電力システム改革が目指す全ての国民の電力選択の自由の保証、発電・送配電・小売の分離による自由・公平な競争の促進、透明・公正な電力市場の形成に逆行します。また、原発以外の電力を利用したいと要望する消費者・国民の理解を得られるとは考えられません。電気料金が原則自由化される中、託送料金は送配電に関わる費用を支払うものとして公共料金としての性格が強く、高い透明性・納得性の確保が求められます。送配電に関わる費用として明確に限定し、賠償・廃炉費用などそれ以外の費用を混ぜ込むべきではありません。

(2)福島第一原子力発電所の事故は、当事者である東京電力とそれを推し進めてきた国が責任を負うべきです。賠償や廃炉などに関わる費用を税金や電気料金など広く国民負担を求めるのであれば、まずは事故の最大の責任者である東京電力、株主、そして債権者がその責任をどう果たしていくのか、国民に説明した上で、国民的な理解を得ることが前提となります。安易に託送料金で徴収するような、国民にとって見えにくい形で回収される仕組みには、大きな問題があると考えます。

(3) 今回の中間取りまとめでは、国民への説明がないまま、数兆円にも及ぶ国民負担に関わる制度設計の方向性が、わずか数名の有識者の議論のみで決められようとしています。このような制度が国民に理解を得られるとは到底考えられません。

私たちはこうした考え方に立ち、以下、中間とりまとめに対し、意見を提出します。

<該当箇所>
p.17 3.2 原子力事故に係る賠償への備えに関する負担の在り方
<意見内容>
賠償費用の過去分を託送料金に転嫁し、需要家に負担を求める制度変更は行うべきではありません。原子力発電事故の賠償費用については、新たな制度を構築する前に東京電力と国の責任の取り方を検討すべきです。
<理由>
賠償費用の不足に対する責任は、安全に必要な対策や投資を怠った東京電力と国にあります。 国が原子力発電を「低廉で安定的なベースロード電源」であるとしてきた経過からも、万一事故が発生した場合の費用も含めてコストを見直し、原子力発電を行う事業者の売電価格に反映させるべきです。国民世論や政府のエネルギー基本計画では「原発依存度を可能な限り低減させる」方向にある中、あえて原子力発電事業を行おうとする事業者には、安全に対する全面的な責任が求められるべきです。事故が起きた責任の一部を他に転嫁できることは、発電事業者としてのモラル低下を招来しかねません。
国や原子力発電事業者が責任を負えないほど、安全性に関わるリスクが高いのであれば、そもそも原子力発電を行うべきではありません。

<該当箇所>
p.21 3.3 福島第一原子力発電所の廃炉の資金管理・確保の在り方
<意見内容>
東京電力送配電部門(東京電力パワーグリッド株式会社)の経営合理化により捻出された資金を、本来の使途である託送料金の引き下げに充当せず、廃炉費用に充てることに反対します。
<理由>
東京電力パワーグリッドの合理化分は、託送料金の引き下げや、安定供給に必要なネットワークの拡充に充てられるべきです。また、廃炉に必要な作業と費用の公開性を高め、国民レベルでの議論を経た上で仕組みを構築すべきです。

上記の通り、原発事故の教訓も顧みず、安全対策や放射性廃棄物の処理、責任の所在などをあいまいにしたまま、不足する賠償・廃炉に関わる費用を、社会的に通用しない理屈をもって、国民の目の届きにくい託送料金で回収しようとするような方策は到底認めることはできません。さらに重大なことは、政府が原発再稼働や原発輸出を進めるなど原発依存を推進していることです。私たちは、一日も早く原発依存から脱却し、再生可能エネルギーの拡大と省エネによる低エネルギー社会を実現するための持続可能なエネルギー政策を、国民的な議論を踏まえて確立していくことを求めます。
以上