公開監査

公開監査レポート

若さとパワーで時代の変化に対応

(有)匝瑳ジーピーセンター

2004年12月11日

 去る12月11日(土)東都生協の卵産地のひとつである(有)匝瑳ジーピーセンターにて公開監査が開催されました。公開監査とは産地の品質管理の仕組みを公開の場で監査し、さらなるレベルアップを目指す取組みです。今回は「東都生協との約束事は守られているか」「生産者や採卵日ごとの区分管理はきちんとされているか」などについて監査しました。その結果、匝瑳ジーピーセンターの確かな取組みが確認されたと同時に、生産者の一人ひとりの言葉から世の中の変化に柔軟に対応する若さとパワーを感じました。監査人からは、さらなるレベルアップを目指すために「文書の整備」「技術向上のためのトレーニング」などについて指摘がありました。
  私たちが安心できる商品を継続的に手に入れるためには、生産者・メーカーとコミュニケーションを図り、お互いの事情を理解することが必要です。公開監査はそんな役割も果たしています。今回は、これからの季節、警戒が必要な鳥インフルエンザについて意思の疎通を図りました。

卵を洗浄・選別・包装する(有)匝瑳ジーピーセンター

餌へのこだわり ─ とうもろこしのみならず、大豆もNon-GMO ─

会場には餌も展示してありました

 東都生協との間にはさまざまな約束事がありますが、主なものは以下の3点です。
(1)東都生協と確認された生産者の卵であること。
(2)150日齢以降、指定配合飼料※で生産された卵であること。

指定配合飼料…Non-GMO(非遺伝子組換え)・PHF(収穫後農薬不使用)のとうもろこし、Non-GMOの大豆を使用

(3) 包装(パック)される卵は、当日または前日に採卵されたものであること。

 特に餌については私たちにとって気になる部分です。約束事を守っているかどうかについては、口頭だけではなく、記録などの文書で確認できることが必要です。餌については、養鶏場への飼料の入荷記録や飼料会社からの納品記録の付け合わせをすることで必要な期間、約束通りの餌を与えていることが確認できました。また、それらの仕組みがきちんと機能していることを生産者の「飼料担当グループ」自らが確認をしている点は評価できます。
飼料の原料が非遺伝子組換えであると一口に言ってもその確認は容易ではありません。というのも飼料原料が日本に来るまでには、いくつもの段階を経ます。例えばアメリカのとうもろこしの場合、農場からカントリーエレベーターへ運ばれ、はしけで川を下って港に着き、穀物用の大型船に積み替えられ、日本に輸送されます。さらに飼料工場で配合飼料になるわけですが、非遺伝子組換えであることを証明するためには、各段階での分別管理(IPハンドリング)が必要となります。公開監査では、飼料会社の方からその説明を受け、各段階での証明書についても確認しました。
匝瑳ジーピーセンターでは、飼料会社からの証明書の確認に加えて、飼料担当グループが飼料工場での確認もしていきたいとのこと、確かさがさらに増す取組みを期待します。

食品工場並みの衛生管理 ─ 生産者・日付も“間違いない” ─

 ジーピーセンターとは「卵選別包装施設」のことで、生産者からの卵を洗い、消毒すると同時に、ひび割れや血が混じっている卵などを除去しています。それらの作業がきちんと行われているかについては、監査人が12月1日の事前監査にて、実際の作業を確認しました。選別・包装室に入るには専用の白衣に着替え、髪の毛などの異物混入を防ぐため帽子をかぶると同時に白衣のごみを粘着ローラーで取り除き、手洗いをします。まさしく食品工場並みの衛生管理が行き届いており、清潔感あふれるところで卵パックが製造されていました。

 約束事にある日付の管理ですが、卵の日付というと、2004年初めに京都の養鶏生産組合が半年前の卵を販売していたという事件が記憶に残っている方も少なくないと思います。匝瑳ジーピーセンターでは、生産者から卵が入荷されると、重さを測り、採卵日と生産者名を書いた「看板」をつけて区分管理しています。洗卵のラインに投入する際にそれらの情報と投入時刻が記録され、その卵から作られたパック卵の製造記録もきちんと取られていました。

 この仕組みがきちんと機能している限り、卵のパックに入っている生産者名と包装日、賞味期限が印字されたカードの内容に間違いはありません。

監査人…専門家1人、他の産地の生産者団体から2人、東都生協組合員3人、東都生協職員2人の計8人

公開監査に先立って、監査人は事前監査を行いました

透過光での検卵、ひびが入ったりひびや血の混じったりした卵を除去します

洗浄・消毒工程では消毒液の濃度も定期的にチェックしています

鳥インフルエンザへの対応  ─ 一番怖いのは風評被害 ─

休憩時間には卵の品質検査を実演しました

 2004年1月に79年ぶりに発生した高病原性鳥インフルエンザ(以下、鳥インフルエンザ)は記憶に新しいところです。
生産者のところでは、野鳥の侵入を防ぐ防鳥ネット、病原菌の媒介者となるネズミの防除、鶏舎に立ち入る際の消毒、部外者の立ち入り制限など考えられる対策を講じていることが確認できました。
 生産者にとって、鳥インフルエンザへの恐怖はさることながら、一番怖いのは風評被害だそうです。事実、今年初めの鳥インフルエンザが日本で発生したときには、「鶏卵や鶏肉を食べてインフルエンザに感染した例はありません」といわれていたにもかかわらず、消費者の買い控えが起きました。同様の例として、2001年に日本でBSE(牛海綿状脳症)感染牛が発見されたときのことを思い出します。そのときも、肉や牛乳・乳製品を食べても安全ですといわれていたにもかかわらず、牛肉の消費は大きく落ち込みました。東都生協の主な牛肉の産地である千葉北部酪農農協では、一時17%まで利用が落ち込んだとのことです。今ではBSEが原因といわれている、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病になることを恐れて牛肉を食べるのを控えているという人はほとんどいないと思います。
鳥インフルエンザが発生したときに重要なのは防疫処置だけでなく、風評被害が起きないように科学的な判断に基づいた消費者の冷静な行動ではないでしょうか。

生産者それぞれの思い  ─ 30代を中心とした若い集団 ─

30代を中心とした生産者のみなさん

 匝瑳ジーピーセンターの生産者は9人いますが、東都生協に産直たまごを出荷している生産者は4人、平飼いたまごは2人です。30代を中心とした若い生産者の皆さんで、公開監査最後に監査人の「将来の展望は」との質問に対して一人ひとりが答えました。以下に産直たまごの4人の生産者を紹介します。

  • 母親から1,500羽の鶏を引き継いで養鶏を始めた越川さん、2年前の台風で鶏舎が倒壊したとき、息子さんの後を継ぐという言葉に鶏舎の新築を決意したそうです。
  • 生まれたときから家業として養鶏をしていた小川さん、継ぐことは自然なことだったといいます。
  • 3年前まで会社員だった伊藤さん、卵がおいしいと言われると自分がほめられたみたいでうれしいと新たなやりがいを感じています。
  • 朝から晩まで休みなく働く親を見て育ったという熱田英和さん、信用して喜んでくださる組合員がいることを知り、ただ卵を作るだけでない価値を産直が与えてくれたとのことです。

 生産者の事を少しでも知ることで、今までとは一味違う卵になることでしょう。

参加者の声 ─ 当日のアンケートからの抜粋 ─

今回参加した方にはアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。

監査終了後、ジーピーセンターを見学しました

「生産者の方々も若い人たちで親子代々という方もいて、子どものころから飼料のことなども理解されていたりなど、安心して生産をお願いできると今回の公開監査を通して感じました」「若さがあり、社会の変化に対応できる力をもっていると感じました。安全で高品質な商品が確実に届けられるように願っています」「久しぶりに応援したい産地に出会いました。この取組みをより多くの組合員(消費者)へ伝え、“確かな商品”として大いにアピールしていきたいものですね」「作業工程のすべてをしっかり管理していることに驚きました。いろいろとチェックしているとは思っていましたが、まさかここまで徹底していたとは想像していませんでした」「過去の反省に立ってシステム構築されていること、若いグループで結束もよい模様なので、今後の期待が膨らむ産直グループと受け止めました」

監査を終えて ─ (有)匝瑳ジーピーセンター 代表取締役社長 熱田喜和 ─

 公開監査が開催され無事終了した事、この間ご尽力頂いた生協職員、産直産地の皆様に、心から感謝しています。
匝瑳ジーピーセンター設立からこの2年間、私たちは現場を正しく動かすということに専念してまいりました。
ここにきて自分たちは、適切に卵を取り扱っているという多少の自負もありましたが、公開監査の準備作業そして監査の中での指摘により、気づいた事・改善点が数多くありました。 また、公開監査を受けたことでの一番の収穫は、生協組合員、職員のみなさんを身近に感じることができ、意欲がわいたこと、意識が上がったことだと思います。
公開監査は、私たちの取り組みを伝える場と理解していましたが、終わってみると、私たちの至らない点や次のステップを気づかせていただき、私たち自身が得られたものが多かったと思います。 このような機会を頂き、さらに上を目指すための再スタートが切れることを、生産者一同大変感謝しております。
PS. 以下に生産者からの感想をそのまま、お知らせします。

●良かった点

  • 外部の意見が聞けて、勉強になった。良い経験ができた。
  • 鳥インフルエンザのリスクを話合うきっかけができて良かった。
  • 東都生協の組合員、職員が身近に感じられるようになって良かった。
  • 準備を進める中で、組織としての一体感が生まれたと思う。
  • 匝瑳ジーピーセンターが自分の組織で、その一員だと強く感じられた。

●反省点、残念な点

  • 消費者、組合員の参加が少なかったのが残念。
  • もっと消費者の声(意見)を聞きたかった。
  • 準備が不十分で、もっと分かりやすい説明ができたらと思った。
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