公開監査

公開監査レポート

若い後継者も育っている

(農)埼玉西部産直グループ

2005年2月18日

 去る2月18日(金)東京から程近い野菜の産地である(農)埼玉西部産直グループにて公開監査が開催されました。公開監査とは産地の品質管理の仕組みを参加者のみなさんで確認し、さらなるレベルアップを取り組みです。埼玉西部産直グループは生産者13人という小さなグループではありますが、農薬の散布や肥料の使用などについての東都生協との約束事が守るための仕組みがきちんとあり、若い後継者もしっかりと育っていることが確認できました。監査終了後には江戸時代に開拓された三富新田で有名な短冊状の区画割を見学しました。

(農)埼玉西部産直グループ…東都生協とは20年以上前からの産直取引がある産地で、ほうれん草、大根、にんじん、かぶ、さつまいもなどの露地野菜が主な生産物です。

屋敷、畑、雑木林が整然と
短冊状に並んでいる三富新田

のべ40時間以上の事前監査 ─ 7人の監査人が手分けして確認 ─

 公開監査の5日前に監査人が事前監査を行いました。産地にある理念やさまざまな規則、またその規則を守っていることを示す記録などの文書の確認および産地への質疑を行いました。埼玉西部産直グループでは各生産者が収穫・袋詰めした農産物を産地として集めて、検品をした後東都生協に出荷しますが、その検品作業も視察しました。さらに、2グループに分かれて、2~3人の生産者のお宅にうかがい、生産者のところでの農産物の選別、小分け、袋詰めの状況や栽培記録の確認、農薬の保管状況などをチェックしました。

監査人…今回は専門家1人、他の産地から2人、東都生協組合員3人、東都生協職員1人の計7人が監査人として産地の取組みを確認しました。

東都生協への出荷前の検品作業を視察

生産者のところでの農薬の保管状況も確認しました

農薬や化学肥料の使用状況をしっかり管理 
─ 埼玉西部産直グループにおける栽培管理 ─

 公開監査では、東都生協との約束事である農薬の散布(種類と回数)や肥料の使用などについてきちんと守られているかを確認します。約束事を守るために産地では、栽培の記録を各生産者がきちんとつけ、その記録を産地として集約し、全生産者が約束を守っていることを点検する必要があります。埼玉西部産直グループでは、出荷の前の週に農薬や肥料の使用状況が記録された栽培報告書を生産者が提出し、産地の事務員がその点検をすることとなっていますが、監査人からの「点検の際に約束違反が見つかった場合はどうするのか」との質問に対しては、「事前にわかれば、出荷を止める。今まではないが、事後の場合は取引先に相談をする」とのこと。間違いが起こった際の決まりもきちんとしていることがわかり安心できました。

 東都生協の自主基準として「めばえ」「わかば」「みのり」といった3つの栽培区分表示があります。化学合成農薬もしくは化学肥料のいずれかをその地域の一般の栽培より3割減らしている「めばえ」、いずれかを5割減らしている「わかば」、そしていずれも使用しない「みのり」です。埼玉西部産直グループでは生産者の化学肥料の使用状況を把握しやすくするために、統一の肥料を決めて一括購入するという取組みを始めたそうです。化学肥料の必要以上の使用は、土壌の疲弊や地下水汚染など環境への影響も懸念されます。持続可能な農業への取組みを今後も期待したいです。

フットワークの軽さで頻繁に品質を確認 ─ 目合わせで出荷基準を統一 ─

 埼玉西部産直グループの場合、収穫した農産物のほとんどは各生産者のところで選別し、小分け・袋詰めされます。そのため、産地と東都生協で決めた出荷基準(大きさ、重さなどの規格や、色、形、虫食い、傷などの品質の基準)を全生産者で共通認識にする必要があります。ここでは出荷前に生産者が収穫した農産物を持ち寄り、出荷できるものとそうでないものの確認(これを目合わせといいます)を全員でするそうです。各生産者が袋詰めしたものはいったん産地の倉庫に集められ、当番となっている生産者が検品をします。ここで各生産者がきちんと出荷基準を守っているかを点検するのです。この検品作業は公開監査の前に行った事前監査の際に監査人が視察したのですが、生産者ごとにサンプリングして重さを量ると同時に品質のチェックもきちんとされていました。出荷基準については、東都生協と産地との間でも目合わせをする必要がありますが、この産地は東都生協の農・畜産品グループと比較的近いため、頻繁に出向いて、確認をし合っているそうです。

 さらに、生産者全員が保冷庫を持っており、夏場なども品質管理ができているとのことでした。

トレーサビリティも間違いない 
─ 「だれが」「どこで」「どのように」がわかる農産物 ─

昼食は交流をかねて産地の
野菜入りお弁当をいただきました

 公開監査では、にんじんの収穫から東都生協の組合員の手元に届くまでについて、スライドで紹介されました。これは実際に産地でのにんじんの収穫から選別・袋詰め・集荷・検品、そして東都生協のセットセンターでのセット、各センターへの納品、班への供給と一連の流れを生産者自ら写真撮影したもので、非常にわかりやすく農産物の流れをつかむことができました。
 食の安全・安心のためにはトレーサビリティが必要と言われています。トレーサビリティとは、消費から生産、いわゆる川下から川上へさかのぼるという意味と、不良品が出た場合にその行き先を特定するために、川上から川下に追跡するという2つの意味があります。
 産物の場合、流通をさかのぼって、「だれが」「どこで」「どのように」栽培したかがわかることが消費者の安心につながります。
 監査人による事前監査では、東都生協に納品された農産物をいくつかサンプルとして選んで、実際にさかのぼることが可能かを試してみました。結果、最終的に生産者およびその圃場まで特定することが可能で、栽培報告書からはどのような農薬や肥料を使用したかもわかりました。「だれが」「どこで」「どのように」栽培したものかことがわかることは安心につながります。

持続可能な農業への挑戦 ─ 環境にやさしい農業の推進 ─

農業への意気込みを語る若い後継者

 東都生協では「くらしと農業と環境の共生」を進める運動である「土づくり宣言21エコプラン」に取り組んでいます。この運動に賛同した産地が自ら立てた行動計画である「アクションプログラム」の進捗状況も公開監査では確認をします。埼玉西部産直グループでは、環境にやさしい農業のために生分解性マルチの使用を推進しています。環境にはやさしいのですが、破れやすいなど使い勝手が今ひとつのため、なかなか広がらないそうです。
 雑木林の管理も容易ではないため、最近では落ち葉堆肥を使っている生産者も少なくなってきているとのことです。消費者の協力も含めたさらなる取組みを期待します。

 農業の継続性ということでいうと、次を担う後継者の有無も気になるところです。埼玉西部産直グループでは、4人の後継者が育っており、最後に一人ずつ農業への意気込みを語っていただきました。農業高校から農業大学校に進んで農業を継いでいる方もいれば、脱サラして最近始めたばかりという方など経過はそれぞれですが、埼玉西部産直グループの理念をきちんと引き継いでほしいものです。

生分解性マルチ…保温や、雑草の抑制などのために敷くビニールシートをマルチといい、その素材が生分解性のため時間がたつと分解され、ごみになりません。ただ、価格が高いのが難点です。
参加者の声 ─ 当日のアンケートからの抜粋 ─

小学校の屋上から三富新田
の風景をながめ、説明を受けました
奥に広がるのが三富新田

今回参加した方にはアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。

「難しいとは思いますけれども、無農薬をめざしてほしいと希望します」「全体にとてもよい印象(受付の方々から説明、回答される方まで)を受けました。今日に備えて一丸となって取り組まれたチームワークの良さが表れた結果だと思います。貴グループの農作物を見る目も変わりました」「後継者がしっかりしているのに感心しました。組合員も生協の野菜をしっかり食べていく後継者を育てる必要があります」「いろいろ大変でしょうが、武蔵野の風景を守って農業を続けてください。思ったより近くなので、産地訪問に来たいと思いました」「都市近郊の露地野菜栽培の現状についてよくわかりました。あとは味(野菜の甘みやこく)の一層の向上を期待します」

監査を終えて ─ 埼玉西部産直グループ 代表理事組合長 田中光次郎 ─

 先般行われました(農)埼玉西部産直グループの公開監査に当たりまして、各関係者の皆様のご協力により、無事に終了することが出来ました。心より厚くお礼申し上げます。

 私たち(農)埼玉西部産直グループは、東都生協と取引を始めて20年余りたちます。これを期に、今まで私たちが行ってきた事業を公開監査という形で検証してみようということで、ここで行う事となりました。
 昔から続けてきた農業。昔から各々作業日誌と言う形で記録はしていましたが、トレーサビリティが叫ばれる昨今、組合としてもすべて記録という形で残すように努めてきました。しかし、今回行ってみて、監査人に指摘された事が多々あり、私たちが気づかなかった部分を教えていただいてたいへん勉強になりました。これを今後の組合の発展に役立てていきたいと考えています。

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