公開監査

公開監査レポート

自分の作ったものは自分で売りたい

保内生産者グループ

2005年9月28日~29日

 極早生みかんが色づき始めた9月28日(水)~29日(木)、愛媛県のみかんの産地、保内生産者グループ※1にて公開監査が開催されました。今回は遠隔地産地訪問との合体企画なので、東京から離れた産地にもかかわらず10人以上の組合員が参加しました。公開監査とは産地の品質管理の仕組みを参加者のみなさんで確認すると同時に、産地のかかえる課題や消費者の思いを率直に出し合う場でもあります。約50人の参加者※2が見守る中、保内生産者グループでは農薬の使用を最小限に抑える努力をしており、東都生協との約束事を守るための仕組みがきちんとあることが確認できた一方で、今後も農業を続けていくために解決すべき事項があることも話題にのぼりました。

※1 保内生産者グループ…17年前に東都生協の呼びかけに応じて集まった生産者のグループで、温州みかんをはじめ、伊予柑や不知火などのかんきつ類を生産しています。
※2 参加者内訳…東都生協組合員:13人、東都生協役職員:5人、他の産地:約15人、保内生産者グループ:約20人

生産者のみかん畑を視察

スケジュール概要 ─ もりだくさんの2日間 ─
2005年9月28日(水)

監査人による栽培状況の視察

13:00 開始
  • 代表者あいさつ(保内生産者グループ、東都生協)
  • 産地からの取り組み報告
14:30 監査人による事前監査
  • 2チームに分かれて、生産者の畑と倉庫などを視察
  • 産地への質疑、文書確認

監査人・・・今回は専門家1人、他の産地から2人、東都生協組合員2人、東都生協職員2人の計7人

2005年9月29日(木)

農薬の保管状況もチェック

06:00 魚市場見学 (希望者のみ)
09:30 公開監査
  • 監査人からの事前監査報告
  • 監査人および会場からの質疑
11:20 まとめ
  • 監査人、保内生産者グループ、東都生協からのまとめ
11:40 終了
  • 東都生協参加者は地域めぐり(大洲、内子)をして松山空港へ
日本一のみかん産地 ─ おいしいみかんが自慢です ─

 みかんといえば愛媛県ですが、その中でも保内生産者グループがある地域は、みかんの栽培に適しているところです。みかん栽培に最も適した環境は、温暖な気候、水はけの良い南側の斜面に面していること、そして海からの潮風が当ることといわれています。これらに加えてこのあたりは結晶片岩という岩盤の影響でさらに味の良いみかんができるとのことです。確かに山の斜面には見事なみかんの段々畑が広がります。特に海沿いのところは太陽の光と、海からの照り返しによりおいしいみかんができるため、日本一を競うブランドみかんの畑がひしめいています。

農薬の使用は最小限 ─ 自分の孫に食べさせたいものを作る ─

 みかん栽培に最適な保内町で、17年前に東都生協の呼びかけに応じて集まった4人の発起人が中心となり、保内生産者グループが発足しました。「自分の作ったものを自分で売りたい」「農薬依存の農業でいいのだろうか」との思いから集まった生産者たち。できるだけ農薬を使用したくないということで、農薬散布は3回以内に抑えています。愛媛県の一般的なみかんの栽培では18回とのことですから、相当な努力が必要となります。さらに、一部の生産者は東都生協の栽培区分「みのり」を実践しています。「自分の孫にどのようなものを食べさせたいか考えて作っている」という生産者の言葉がこのグループの姿勢を象徴しています。

みのり…東都生協の自主基準に基づく栽培区分で、化学合成農薬(有機JASで使用できる農薬は除く)や化学肥料を使用しない栽培 。
継続可能な農業に向けて ─ これからも作り続けてほしいから ─

 監査人からは、今後の保内生産者グループの継続のためにも、10年20年先を見据えた上で、組織の決まりごとや記録の整備を進めていってほしいとの意見が出ました。そうすることが産地の広がりにつながるのです。広がりとは、販売先の広がりであり、地域での仲間の広がり、そして後継者の広がりでもあります。
前述したように保内生産者グループは農薬の使用をぎりぎりに抑えており、環境に負荷をかけない農業を実践していますが、農薬の使用が少ない分リスクもあります。虫や病気にやられて木自体が弱くなってしまい、その後の生産に影響が出てしまったり、除草剤を使用していないため、除草作業に追われ、せん定や摘果など品質を高めるための作業に手が回らなかったり、ということもあり得るのです。農薬の使用は環境のためにも控えてほしいのですが、それが農業の継続を脅かすのであれば、本末転倒になってしまいます。このことを私たちは理解しなければなりません。

除草…みかん畑は斜面にあることが多く、草刈機を担いでの斜面での作業は重労働となります
目合わせ会で品質基準を統一 ─ 選別と区分管理 ─

倉庫での区分管理状況を聞き取り

 この産地はグループの倉庫や選果場があるわけではないので、各生産者が出荷基準に従って選果、荷造りをして運送会社に持ち寄ります。そのため、各生産者の基準(大きさなどの規格、きず、色づき、形など)を合わせるために出荷前にサンプルを持ち寄った目合わせを入念に行います。また、生産者によっては東都生協向けとそれ以外で畑を分けて、使用する農薬も違いますので、収穫した生産物を畑ごとに管理する必要があります。監査人による事前監査では、各生産者の倉庫内での区分管理の状況、つまり収穫した畑をどのように判別しているのかを聞き取りによって確認しました。また、出荷する際には伝票に収穫した畑の名前を書くことになっているので、間違いないことを確認できます。

品種の変遷 ─ 夏みかんから不知火へ ─

 温州みかん以外では、戦後は夏みかんの生産が盛んでしたが、その後、甘夏みかん、いよかんと新しい品種が出てきて、現在、作付面積が増えているのは不知火(いわゆるデコポン)です。また、最近出てきた品種に「はるか」があります。これはかんきつには珍しく酸味がとても少ない品種です。「糖度が高いわりにはさらっとしたさわやかな味で、今までのかんきつの常識を覆すほど」とのこと。3月の商品案内に掲載される予定ですので、注文してみてはいかがでしょうか。

収穫体験でじっくり交流 ─ 顔が見える関係に ─

生産者と収穫体験をした組合員

 今回は遠隔地産地訪問との合体企画のため、監査人が事前監査をしている間、参加者は極早生みかんの畑で収穫体験をしました。あいにくの雨で、雨合羽を着ての短時間の収穫体験ではありましたが、その分近くの集会所で生産者とじっくり交流することができました。参加者からは、「おいしいものを安心して食べられるまでには、さまざまな苦労や努力があることがわかった」「ここで見たこと感じたことを伝えて、利用を増やしたい」などの声が寄せられました。産直を通しての生産者の取り組みや努力を知ることで、産地をより身近に感じることができた2日間でした。今までは生産者カードでしか知ることができなかった生産者と直接交流することで、まさしく「顔の見える関係」になりました。これからは保内生産者グループのみかんも一味違うことでしょう。

参加者の声 ─ 当日のアンケートからの抜粋 ─

今回参加した方にアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。

「おしまない労力に感心し、私たちは安全を確かめることができ、今回参加できたことを感謝しています」「いよかんが一番多くの出荷量があり、ポンカンが伸びているのがわかりますが、全体に年ごとに少なくなっているのが心配です」「産直は平等の力関係があってこそ、将来に希望を持ち、お互いに信頼関係を築いていきたい」「生産者の思いと消費者との要望とのへだたりを感じた。もっと生産地の声を形にしてもよいのではと思う」「保内生産者グループのかんきつ類は、味がありとてもおいしいです。なぜかということが今回よくわかりました」「生産者の生の声をじっくり聞くことができてよかったです。厳しい規約の中、本当に一生懸命取り組まれていることが、より一層わかりました」

公開監査と遠隔地産地訪問へのお礼 ─ 保内生産者グループ 代表 二宮俊明 ─

 今回、保内生産者グループの公開監査においでいただきました皆さん、ご遠方までありがとうございました。
 東都生協より公開監査を行いたいと電話があったのが5月中旬、それからばたばたと事務局の書類の整理を行い、今まで参加した他の産地の公開監査などを参考にしながら、準備に取り掛かりました。
 記録はちゃんとできているか、約束は守られているか、事務経験のない私たちには大変な負担でしたが、何とか開催することができました。東都生協との約束事は日常きちんと守っているつもりでも、出荷したみかんに0.01ppmの不使用農薬が検出されたと通知があると本当にびっくりします。隣地から農薬が飛散するおそれのあるものは、地方市場へ出荷することにしております。
 「極端に農薬を減らし、除草剤を使用しない栽培で、保内生産者グループは農業が継続できるのか」との監査意見をいただきました。私たちも少子高齢化の世相を踏まえ、樹園地の維持と採算を考えると大きなネックになってきております。
 今回の公開監査を体験して、これからは内部監査を充実していつでも公開監査を受け入れできる体制を作り、東都生協組合員の皆さんのさらなる信頼をいただける、保内生産者グループにしていきたいと、思いを新たにしております。
 遠隔地産地訪問にお出でいただきました組合員のみなさん、あいにくの雨で体験を満喫できなかったと思いますが、産地の実態は見ていただけたと思います。温かいアンケートの言葉、ありがとうございました。またの訪問を待っております。

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