公開監査

公開監査レポート

物だけでなく 心と心のつながりをめざす

(有)どさんこ農産センター

2003年12月5日

 2003年12月5日に、じゃがいもや玉ねぎをはじめとして、夏のミニトマト、秋のかぼちゃと北海道の代表的な野菜の産地の一つであるどさんこ農産センターにおいて、公開監査が行われました。確かな農産物を生産し、間違いなく出荷する取り組みが確認されたと同時に、確かな物だけではなく、心と心のつながりを目指すどさんこ農産センターの姿勢を見ることができました。

どさんこ農産センターのレベルの高さが明らかに

 当日は、どさんこ農産センターの生産者をはじめ、東都生協と取引のあるほかの産地や、どさんこ農産センターの取引先など、合計約80人が参加しての開催となりました。公開監査では監査人(今回は専門家1人、他の産地から2人、東都生協組合員3人、同じく職員2人の計8人)が、前日の事前監査を踏まえて会場で産地への質疑を行います。使用農薬や出荷基準などの約束ごとを守るために産地にはどんな仕組みがあるか、またその仕組みが実際に機能しているのかを聞き取りにより確認をし、会場の参加者にも分かるように明らかにしていくのです。その結果、約束も守られており、さらなるレベルアップを図っていることが確認されましたが、しくみの完成度をさらに上げるための改善について、いくつかアドバイスがありました。具体的には「栽培基準や生産計画の決定までの進捗状況がチェックできるようにする」「栽培技術の向上などのために生産者同士で現地視察を行う」「栽培記録などをチェックする人へのトレーニングを行う」「アクションプログラムにある農薬や化学肥料の削減は、具体的な目標を設定する」などです。

自然エネルギーを利用した雪氷室

 どさんこ農産センターのエコプランアクションプログラムの一つに「環境にやさしいエネルギーの利用を推進します」というのがあります。それを具体化したのがこの雪氷室です。雪の多い北海道ならではのこの施設。その名のとおり冬にたくさん積もった雪を利用して気温の上がる春から夏にかけての野菜の保冷をするのです。雪を利用するため、保冷効果だけでなく湿度も保たれ、野菜の鮮度保持に最適の環境となっています。
  公開監査のときは冬であるため、雪を入れるスペースもじゃがいもで倉庫は埋まっていました。これからじゃがいもを出荷するかわりに雪を入れて暖かくなる春に備えるとのことです。昨年8月に行った際には、まだ雪が残っていて中はひんやりとし、自然の力を実感しました。

どさんこ農産センター自慢の雪氷室

8月でもこんなに雪が残って中はひんやり

生産者全員が約束とおりの栽培をするために

 農薬や肥料の使用など農作物の栽培方法については、産地ごとに基準があります。そしてそれは、できるだけ不必要な農薬を散布しなくて済むように、毎年見直します。どさんこ農産センターの場合、減農薬・減化学肥料を目指しているのでそのことを踏まえて、まず栽培基準を生産者で話し合います。最終的に産地として確認をしたら、取引先に連絡をし合意の後、栽培が始まります。その基準どおりに生産者が栽培しているかどうかは、生産者が記入する3種類の栽培管理記録を産地が確認することによって確かになります。さらに、生産者の自覚を促すために、生産者は産地の栽培基準を厳守することを書面にて誓約しています。
 公開監査では、「3種類も栽培管理記録があるのは、それを書く生産者にとって負担になっているのではないか」「3種類も作る意味があるのか」といった監査人からの質問も出ましたが、会場に来ているどさんこ農産センターの生産者への聞き取りや産地の説明により、生産者にとって苦にはなっていない、むしろその3種類の記録にはそれぞれ意味があって、補完し合うことにより間違いを少なくしていることが分かりました。

トレースの確かさ

 最近、食品のトレーサビリティということがよく言われますが、これはトレース(さかのぼる、追跡する)とアビリティ(能力)という2つの言葉が合わさったものです。このトレーサビリティには不良品が消費者の手に届いたときにその原因究明のためにいわゆる川下(消費者)から川上(生産者)までさかのぼることと、逆にその不良品がいきわたった先を特定するための川上から川下に追跡するという2つの意味があります。
 事前監査において実際にトレースができるかどうかを、いくつかのサンプルで試してみたのですが、東都生協に出荷した青果物が誰のどこの畑でどんな風に栽培されたものかまで、きちんとさかのぼれることが確認できました。
 公開監査では、ある取引先から「出荷したものに人体に被害を及ぼすようなものが混入していた場合、どのくらいの時間で回収が可能か」との鋭い質問が出ました。それに対し、どさんこ農産センターは「それを想定して行ったことはないが、その日のうちに生産者や圃場の特定はできる」との回答でした。実際にトレースを行った監査人からは「30分もあれば可能。相当に整理されている」とのコメントがありました。

貯蔵されている玉ねぎのコンテナは荷札で管理(生産者名、収穫日、選果日、畑番号など)

品質維持に向けた厳しい目

 産地では生産者が約束どおりに栽培した農産物を選果(大きさや重さ、色づき、傷の有無などで選別)し、一定の品質以上のものだけを出荷しています。どさんこ農産センターは赤井川と蘭越の2つの地区がありますので、同じ品目を出荷する際には、実際に選果作業する人たちを1カ所に集めて、全員の基準を一致させます。具体的には、現物を目の前にして、出荷するものとはじくはじくものとの境目を統一するのです。取引先からの声も参考にして必要に応じて出荷基準は見直しています。
 事前監査では実際の作業を見学することができなかったのですが、8月に行った際にはトマトの出荷基準について実際に切って中身を確認しながら、作業するパートさんたちに指示をしていました。

貯蔵されている玉ねぎのコンテナは荷札で管理(生産者名、収穫日、選果日、畑番号など)

監査人として参加した組合員の感想 ─ 抜粋 ─

今回は監査人として東都生協の組合員3人が参加しました。監査人になるための講習会を修了した組合員理事の皆さんです。以下は公開監査に参加しての感想です。

大切にすべきものを確信

 過酷な農作業と品質管理を経て北の大地から安全で美味しい野菜が届きます。それが皆さんには伝わっているでしょうか。
 今回のどさんこ農産センター公開監査は私たちとの約束を守るための産地の取り組みや到達点を公開することにより、さらなる目標を確認し、取り組みが確かであることを証明する場となりました。
 環境保全型農業を進める意義とご苦労を知ることにより、大切にすべきものを確信しました。

安全・安心は生産者と一緒に作り上げるもの

 私が今、目を通している書類の中に、生産者の日々の努力と、安全で安心できる野菜作りに正直に取り組む姿がある。そして、その先には、安全・安心な野菜の供給をうける組合員の姿がある。信頼というきずなは、三十年近い東都生協との取引をより確かにし、今回の公開監査により今まで以上の信頼関係が出来上がった。
 このことを正確に組合員に伝え広めていくことも、今回私の役目であると思った。食の安全・安心は自らの意志をきちんと伝え、生産者と一緒に作り上げていくもの、そのためにも、公開監査を多くの産地におこなってもらい、確かめていくことが大切だということを再確認しました。

生産者を応援するためにできること

 公開監査は産直運動の信頼関係が成り立っているからこそ開けるのだと思います。
 公開監査を通してさまざまな書類などを閲覧して産地の取り組みの様子が精細にわかり、安全な商品を届ける仕組みを自分の目で確かめられ、確認できることは大変意義のあるものです。また、生産者は消費者がどんな商品を求めているかも知り得ます。
 コミュニケーションを深めることにより、産地ができること、消費者がやれることは何か、お互いの立場に立ち、理解しあい、合意形成が確立されます。
 産地の取り組みの様子を広く組合員に伝え、生産者がよりよい商品を安心して作り続けられるように、私たち消費者は商品を買い支え、生産者を応援していくことが大事だと思います。

監査を終えて ─ どさんこ農産センター代表 二川健司 ─

 公開監査を終えて本当はホッとするのでしょうが、何となく大きな課題を背負わされた気がします。準備も含めて大変な日々が続きました。決して飾ろうとかごまかそうとして悩んだ訳ではないのです。自分たちが普段行っている事、努力していることアピールしたい事が表現できないもどかしさがありました。案の定過大評価もあり、また誤解や充分アピールでききれないこともたくさんあった公開監査でした。でも公開監査は到達点ではなく出発点であること思い知らされたと思っています。信頼されるにふさわしい産地を目指してまだまだ努力しようと改めて思っています。公開監査は自分たちの現状を見つめ直す絶好の機会として捕らえると大きな意味があると思います。そして願わくは組合員の皆さんに知ってほしいと思うのです。資料を整えたり安全と思われる農産物を生産するのは経験を積めばいずれできることです。でも作る人と食べる人のキャッチボールができなければ公開監査は生協と産地の自己満足に終わってしまうセレモニーです。この公開監査を生産者も生協も組合員もお互いを知る機会として捕らえ、心の交流につながって行ってほしいと願っています。

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